INTERVIEW

01 02 03

柴田 陽一

Head of Design, Games

企画段階からゲームの体験設計まで広範にわたるADの役割

INTRODUCTION
現在は「クリエイティブ戦略室」という部署に籍を置きながら、各チームを跨いでプロジェクトに携わっているという柴田さん。幅広い業務領域の中で感じた、アートディレクションの難しさ、楽しさ、そして仕事への向き合い方と、これからの未来について話してもらった。

目的を常に忘れない、
アートディレクションとは?

柴田さんは現在アートディレクターというポジションで働かれていますが、具体的にどんな業務をされているんですか?

ゲーム業界におけるアートディレクターって会社によって定義が違ったりもするんですけど、僕の場合はイラストやキャラクターに関わることを広範囲で任せて頂いています。具体的には、イラストにおけるコンセプト設計、キャラクターデザイン、キャラクター設定、美術設定、カードイラストの企画、イラスト制作、それらに関係するルールやフロー、レギュレーションを設計する業務を担当しています。

いずれの方法にせよ、「目的に沿ったイラストを描く」ために陣頭指揮を執っているということですね。

そうですね。イラストを完成させて終わりという訳ではなく、ゲーム内でのイラストの使われ方まで責任を持ってディレクションしています。場合によってはゲームの物語を考える段階から参画させてもらうこともありますね。『ハチナイ(八月のシンデレラナイン)』は、そういった感じで、企画の「種」の時から世界観の設定もいっしょに考えさせてもらいました。

現在は特定のプロジェクトに入って仕事しているんですか?

今は「クリエイティブ戦略室」という自分のチームがあるので、特定のプロジェクトに所属はしていません。横軸の組織として、各プロジェクトで問題が起きた時に解決のサポートをしたり、リソースのアロケーションを行ったりしています。

アートディレクションという、視覚的にはまだ何もない状態の企画段階から「目に見えるイラスト」にしていく仕事の中で、柴田さんならではのメソッドというのはありますか?

テーマからズレないことですね。目的思考と言い換えても良いと思います。この絵のテーマは何なのか?誰向けなのか?イラストを見た人にどういった気持ちになって欲しいのか?イラストのカメラ、キャラクターの心情や動き、背景、明暗、色など、これらすべての要素はテーマから逆算して構成すべきと考えています。このイラストは何の目的で作られていて、全ての構成要素が、目的を達成する為に機能していることが重要です。何の考えもなく絵の要素を構成すれば個人の趣味や好き嫌いでイラストが出来上がってしまいますからね。

とにかく「人」が大事。
直面したチーム作りの難しさ。

日頃の仕事について、柴田さんが心掛けていることはありますか?

自分自身が常に変わっていかなくてはいけないということ、アップデートしていくということは心掛けています。過去の成功体験に頼って仕事していると、あっという間に通用しなくなってしまうので。たとえ以前は成功していたやり方だとしても、時間が経ったり環境が変われば、それに応じてやり方も考え方も大きく調整していくようにしていますね。

アートディレクションという仕事に感じる悩みや、壁にぶつかったエピソードはありますか?

ユーザーの皆様に、これまでにないゲーム体験や突き抜けたアウトプットを届けたいと思っているので、壁にぶつかってばかりですね。常に悩んでいます。特に感じているのは「チームを作っていくこと」の大変さかもしれません。「集団とチームの違い」という話がありますが、僕らは集団ではなく、チームでありたいと考えています。プロジェクトの遂行のためだけに集められた集団ではなく、絆を持ったチームですね。そういった絆は目指すビジョンや文化から生まれてくるものだと考えています。人数だけ増やすなら、何とか出来ちゃうと思うんですが、志を同じくする仲間を大勢集めていくのは簡単なことではないと思います。

同じマインドを持った人材を探し集める必要がありますからね。

そうですね。アカツキは独自の考え方や文化が強いのが特徴だと思っていますが、その考え方や文化に心から賛同してくれる方とは、そうそう巡り合えるものではないと思います。本質思考だったり挑戦心が強かったり、好奇心だったり、これまでのやり方に拘泥しなかったり、そういったマインドの方であれば、すぐに馴染めるんじゃないかなと思っています。ちょっとだけ変わってますが(笑)。

そうした課題の「難しさ」に直面した時、どう対処していくんですか?

幸いなことに、アカツキにはむちゃくちゃ頼れる仲間が大勢います。デザインのメンバーはもちろんですが、他職種の方々にもいろいろと相談に乗ってもらうことも多いです。こういった横の繋がりが強いことも、アカツキの面白いところではないかと思っています。会社の内側外側を問わず、色んな人に協力してもらいながら、日々の困難に立ち向かい続けたいと考えています。

デザインの在り方は
今後どう変わっていくか。

最後に、ゲームにおけるデザインの未来について、何か考えていることはありますか?

世間一般でも言われているように、AI技術がどうデザインに活用されていくかは気になります。デザインも論理立てて設計している以上、AIの技術で出来ることも多そうですからね。一方で、論理だけではない感覚を大事にした素晴らしいデザインも存在していると思っており、この「AIに任せられる部分」と「任せられない部分」の見極めが重要になってくるのではないでしょうか。

他に注目していることなどありますか?

ゲームも含め、デジタルツールの発展が様々なコンテンツの開発を簡単にしていくことにはとても興味があります。例えばメディアの更新頻度の話なんですが……、各メディアは産業技術の発展に合わせて更新頻度が短くなり、更新頻度が短くなることで、より世間に浸透していくという歴史を辿ってきたと思います。制作に何年もかかる映画が、TVの出現によって毎週番組を制作したり、生放送を実施したり。YouTubeでは毎日更新される映像コンテンツも珍しくないですよね。雑誌、特に漫画雑誌は月刊誌から週刊誌に更新頻度が短くなることで社会で広く認知されるようになりました。このような歴史を鑑みると、毎日更新されるアニメ、毎週続編が配信されるゲームなど、コンテンツの更新頻度が短くなっていく可能性はありそうです。ゲーム制作の敷居を極端に下げるツールの登場や、アニメを作画ではなく撮影する方法の確立など、従来のコンテンツ制作方法とは全く違ったものが出てくる未来もありえるかも知れません。現にハリウッドなどではVR空間上でCGを撮影する技術で映画が制作されているそうです。VR空間上のCGアニメキャラクターを撮影することでアニメを制作することは十分考えられる方法かと思います。

「アニメを撮影する」というのは面白い発想ですね。

今は、アニメ業界の方々もゲームエンジンを使ってアニメを制作していますし、ゲームとアニメの業界の境界も少しづつ曖昧になってきていると感じています。アニメだけでなく様々なエンタメの領域が相互に影響し合って、それぞれの境界はどんどん曖昧になっていくかもしれません。海外で制作されたドラマでノベルゲームのようなデザインのものもありますし、スポーツ中継の番組がスポーツゲームのようなUIデザインを採用しているケースもあったり、スポーツそのものもゲーム的な映像演出を付与してアップデートさせようという動きもあります。様々なコンテンツにおいて、ゲームの手法、ゲームのデザインが活躍していることを実感します。ゲームがエンタメ領域を幅広くカバーできるものだとすれば、僕らにもまだまだ出来ることや新しい体験を創れる可能性があると思うんです。それを想像するとワクワクしますね。アカツキから新しいゲーム体験を創ることにチャレンジしていきたいです。