INTERVIEW

これまでは別々だったシナリオチーム同士を繋いで、より強く。

ROOTS 水野 崇志
ROOTS 柴山 由貴
INTRODUCTION
複数のゲームプロジェクトが同時進行しているアカツキにおいて、同じ職能であるにも関わらずこれまではほとんど接点がなかったというそれぞれのシナリオチームを「繋ぐ」横串の組織として誕生した「ROOTS(ルーツ)」。立ち上げメンバーの2人に参加してもらい、発足の経緯から、役割と成果、そして今後の展望までを話してもらいました。
水野 崇志

フリーランスのシナリオライターとして約10年間の活動を経て2017年、シナリオディレクターとしてアカツキへ入社。プロジェクトを横断したシナリオ職能組織「ROOTS」のリーダーも務める。

柴山 由貴

前職のコンシューマでの恋愛アドベンチャーゲーム開発を経て、ソーシャルゲーム開発への興味から2017年にアカツキへ入社。現在はシナリオディレクターとして、「ROOTS」にも参加している。

シナリオチームのリーダーが
繋がれる場所が必要だと思った

このインタビューではアカツキの各プロジェクトのシナリオディレクターが集まって発足されたチーム「ROOTS」に関する理解を深めていくことを目的にしています。まずは立ち上げ以来リーダーを務められている水野さんから、発足のきっかけを教えてもらってもいいですか?
水野:シナリオディレクターとしてアカツキに入社した当初から、「アカツキのシナリオ」を強化したいという思いがありました。僕が入社するまでは、各プロジェクトのシナリオ担当者は「企画職」として互いに面識がある程度で、シナリオ領域の担当者としての繋がりはなかったと聞いています。しかし、入社後に柴山を含めた各チームのリーダーと話す中で同じ課題感を抱えていることが分かったので、そうした課題を一緒に相談しノウハウを共有しながら解決できるよう、横串の組織として活動を始めたのが「ROOTS」です。最初はリーダー6人で集まりシナリオに関する雑談から始めましたが、みんな「初めまして」からでしたね。その中で、相談や議論を自然とするようになり、正式に組織として動き出したのは2018年の1月くらいです。
水野さんたちが当初感じていた「課題感」というのは、具体的にどういったものだったんですか?
水野:大きくは「シナリオ担当者同士の節点がない」こと、そして「シナリオ職能への認識不足」の2点です。そのため、まずはシナリオチームのリーダーが繋がれる場所が必要だと思ったんです。そもそもシナリオライターは、誰もが使える「言葉」という表現で、唯一無二の物語や登場人物を生み出す職業です。自分の知識や経験だけでなく、価値観や哲学といった「自分を削る」ことで書かれる方が多いです。ただ、そんな状態が続くことで、気付かない内に心身が疲弊してしまったり、シナリオへの乱暴な指摘で「自分の人間性や人格が否定された」と感じ衝突してしまうなど、不本意な理由で筆を折られる方を過去に何度か見てきました。それはリーダーの方々も同様で、様々な状況で板挟みとなり孤独になることが多いです。なので「人を大切にする」アカツキという会社だからこそ、そうした方たちが癒される場所をまず作ろうと考え実践しました。仲間がいると分かるだけでも気が楽になるし、やりがいを感じられるんですよね。それと合わせて「職能への認識」は、自分たちから様々な形で発信することを始めました。
柴山さんも同じく、そうした「課題感」を持たれていましたか?
柴山:そうですね。私も当時シナリオチームのリーダーだったのですが、あまり悩みを相談できないというモヤモヤを抱えていたので、水野から声をかけてもらえたのはありがたかったです。「今チームでこういう課題があるんですよね」って共有すると、すでに同じ課題を解決した方からアドバイスがもらえたりして、ROOTSメンバーで話す時間はとても有意義でした。
「ROOTS」には現在何名くらいが所属しているんですか?
水野:現在の「ROOTS」は主にシナリオ職能の運営をするチームなので、シナリオライター全員が所属しているという形ではないんです。運営に関わっているのは現在4~5名くらいですね。
「シナリオ職能の運営」とは、具体的にどのようなことをされているんですか?
水野:現在は主にシナリオ担当者の「働きやすい環境作り」と「スキルアップ」に繋がる取り組みを行っています。例えば、シナリオ担当者の採用に関しては柴山がフローを全部整えてくれて、今も任せています。また、シナリオ職能に関する相談があれば何でも乗るようにしています。あとは僕やシナリオ担当者の方々が感じた「職能の課題」や「今後やりたいこと」などをメンバーに壁打ちして、実際に進めていく上でどうしたら良いかをロジカルに整理してから実践するようにしていますね。
先ほど話されていたシナリオライター特有の「悩み」のケアなどもされているんですか?
水野:そもそもアカツキでは「1on1」という、メンターと1対1で話す取り組みを推奨しているのですが、シナリオ職能のメンバーに対しては僕が半期に1回「1on1」を必ず行っています。シナリオ担当者は言葉一つ一つにこだわる感受性の豊かさから、周囲に気を遣う方も多く、言いたいことがあっても「チームの迷惑になるかも」と考えて言えないケースも多いんです。そんな時に僕が第三者として相談に乗り、結節点となって解決に向けて動くこともありますね。

一人ひとりがどんな思いで
仕事をしているのかまでも
把握できるようになった

「ROOTS」が発足/運営され始めたことで実際に手応えは感じられましたか?
水野:やっぱり「職能の繋がり」が生まれたことはすごく良い変化だと思います。以前までは社内にどんなライターがいるのか、何人いるのかも分からなかったのが、一人ひとりがどんな思いで仕事をしているのかまでを把握 できるようになりました。その上でリーダー同士でのノウハウ共有や相談ができる結節点が作れたこと、それに続く様々な職能に関する取り組みができたことは、「ROOTS」としての活動で構築できたことですね。
柴山:プロジェクトとの採用周りでの連携がとりやすくなったと感じています。ROOTS発足前は、各プロジェクトのプロジェクトリーダーが、シナリオチームで求めている人材の採用要件をとりまとめていました。そこにROOTSメンバーのサポートが入ることで、より具体的に「どんな役割の人で、どんなスキルが求められているか?」、「このチームにマッチするのはどんな人か?」など、現場の状況に即した細かい採用要件を作ったり、面接の際に「こういう質問をした方が良いですよ」という面接質問資料を共有するなどのフォローをすることで、よりスキル面やパーソナルな面で、チームとマッチする人材を採用することができるようになったのは、大きく変わった部分だと思います。
ちなみに柴山さんが考える「採用する上での基準」というのはどんなものがありますか?
柴山:スキルと同等に「アカツキにおけるシナリオ制作スタンスに合うか」というところは重要視しています。チームでシナリオ制作をしているプロジェクトが多いため、他者の意見を柔軟に取り入れようとしたり、きちんと納期を守れるという意識があるかなど、は重要な基準になります。
「ROOTS」では新規採用だけでなく、社内の異動にも関わられているんですか?
水野:そうですね。「この人はこういうライティングが得意だよね」とか「あの人はこういうことをやりたいって言ってた」という話を「ROOTS」として共有できているので、それを踏まえた上で「このプロジェクトにはこの人が合っているんじゃないか」と相談させてもらうこともあります。
確かに採用面で「ROOTS」があることの意味は大きいですね。水野さんが先ほど話された「ノウハウの共有」という手応えについても具体的に教えてもらっていいですか?
水野:今まではプロジェクトごとに全然違っていた資料の作り方も、「ROOTS」が運営するMTGでノウハウの共有が行われることで、より分かりやすく効率的にできるようになったと思います。各リーダーが教えてくれる「チームの信頼関係を構築するために、こういう施策をやっています」というような話もすごく面白くて、それらも「ノウハウの共有」として聞かせてもらっていますね。

今までの価値観を覆してしまうような
「シナリオドリブン」なものを作り出したい

シナリオライターとしてアカツキで仕事されている中で、シナリオ自体にも「アカツキらしさ」を意識することはありますか?
水野:アカツキではまず「プロジェクトのWhy」が大前提としてあるので、その方針を土台として「プロジェクトとして目指すシナリオ」を各シナリオチームが考えてくれていますね。自社IPだけでなく他社IPのシナリオを書かせていただくことも多いので、その際には他社IPに対するリスペクトをしっかり持つこともアカツキらしさだと思っています。
柴山:アカツキのライターは、「ユーザーが求めるものに忠実なシナリオを書くこと」を意識して執筆していると思います。それは独創性がないということではなく、きちんと世界観を表現している、破綻のないシナリオ、という意味合いです。シナリオやテキストはユーザーに近いコンテンツだからこそ、タイトル自体への信頼に大きく影響を及ぼします。ライターは、キャラクターの行動原理や価値観を理解しておかなければ、忠実に表現することはできません。そのためにも、プロジェクト配属の際などは、リーダーがキャラクターのインプットに多くの時間を割くことを推奨していたり、ライター達が自発的にキャラクターの魅力を語る場を設けるなどをしています。メンバーもチームの方針に合わせて自身の中でキャラクターを理解し、落とし込む努力されている姿をよく目にしますね。
そんなアカツキで、今後どんなシナリオを届けたいと考えていますか?
水野:アカツキではよく「カラフル」という言葉を使うのですが、シナリオを主軸としたドラマ体験でユーザーの人生に色を足すような、遊んだ瞬間からその人の人生がカラフルになるような、そんな新しい価値観や肯定感を届けたいと考えています。
柴山:今までの価値観を覆してしまうような「シナリオドリブン」なものを作り出したいですね。それはゲームという表現方法に限らず、もっと別の表現方法が適しているのであれば、ゲーム以外でもいいと思ってます。
横串の組織である「ROOTS」としては、各シナリオライターのスキルの強化にも取り組まれているんですか?
水野:センス面でのインプットは個々人でできると考えているので、「ROOTS」としては例えばシナリオライティングのスキルに関するノウハウ書籍を全員に配布したり、リーダーの方には外部講師を招いてのシナリオ研修を実施するなど、よりロジカルな部分でクリエイティブをサポートするようにしています。
柴山:そうですね。そうやってロジカルな面を学んだ上で、今流行っているコンテンツやキャラクターは何か、どういったシナリオが、どんなターゲットに受け入れられているのかなど、それぞれが自主学習しています。
ちなみに、ゲームにおけるシナリオライティングについて、お手本となるような他ジャンルというのはありますか?
柴山:私は連続ドラマのシナリオをお手本にしています。連続する長い尺の中で視点変更が入るというところが、ゲームのメインシナリオの表現と似ていると思ったからです。主人公視点、サブキャラ視点、第三者視点、さまざまな視点から一つの事象を捉えるところは、ゲームにおけるシナリオ演出の参考になります。あとはハッシュタグのように、SNS上で流行っていてる旬な表現を調べ、ターゲット層の間で共通言語になっていのであれば、積極的にシナリオに取り入れるようにもしています。逆に、死語になりつつある単語も情報を集めたりしていて、そういったことも「ROOTS」で共有していますね。
水野:担当するゲームのシナリオパートが3Dか2Dかによってもお手本は変わってきますよね。カメラワークのある3Dなら「実写映画」や「アニメ」のカット割りとそれにあわせたセリフ運び、視点が固定された2Dなら背景が限定され、観客の視点も固定されている「舞台」でのセリフ表現がすごく参考になるんです。

プロデューサーとメンバーの
結節点となれるような

それでは今後「ROOTS」がどのような発展を目指しているかについても聞かせてください。具体的な目標は設定されていますか?
水野:大きく3つの目標があります。1つ目は「ROOTS」から「自社IPを創出する」ことです。モバイルゲームが流行っている今、シナリオがメインとなったコンテンツというのはかなり限られていると感じています。「気軽に遊べること」や「ドラマ性よりもキャラクター性」が優先されている今だからこそ、僕たちとしてはストーリーを愛してもらえるような、「このシナリオを読んで人生が変わりました」とか「救われました」と言ってもらえるような自社IPを生み出したいです。僕がそうやって救われた人間でしたから。2つ目は「ROOTS」として「シナリオ職能のイベントを開催すること」ですね。
それは先ほどお話されていた「既存の施策」とはまた違ったものですか?
水野:社内メンバーだけでなく、社外からもゲストを呼んだりして、業界全体でゲームシナリオライターの認知度が上がるようなイベントがしたいんです。ゲームシナリオライターという職能自体の価値が高まるのであれば、先ほど話したような「ノウハウの共有」を社外に届けても良いと考えています。業界全体のメリットになるようなことをアカツキとして、「ROOTS」として主導していきたいんですよね。3つ目は「クリエイティブとマネジメントを両立できる仲間の育成」です。
クリエイティブについては先ほどお聞きしましたが、マネジメントとは具体的にどのようなことを指していますか?
水野:例えば今主流となっているモバイルゲームだと、更新頻度や物量からシナリオを1人で書くのは難しいことが多いです。そうなると当然チームで書くことになるのですが、チームを長く運用するためには信頼関係の構築がすごく大事になります。そのため、メンバーから信頼を得られるスタンスと適切なコミュニケーションがとれる方、そんな「マネジメント」の能力と「クリエイティブ」を両立できる仲間を育成していきたいですね。
それは今後「ROOTS」に参加される新たな人材にも求められることですか?
柴山:そうですね。プロデューサーが描きたい世界観が漠然としたものであっても、それを目的にあわせて具体化して、実際にライティングをするシナリオライターや、他セクションのメンバーに正確に意図を伝えられるといった、プロデューサーとメンバーの結節点となれるようなコミュニケーションスキルも求められますね。
水野:プロデューサーから「こういうゲームを作りたいんだよね」と提案された時に、その世界観をちゃんと汲み取りながら、自分の色も加えられるもの作りができる方だと嬉しいです。あとは当たり前ですけど、人の話をちゃんと聞いて、自分の意図を丁寧に伝えられることも重要だと考えています。アカツキという会社である以上、これからも人との「繋がり」を大切にしながらもの作りをしていきたいですから。