INTERVIEW

シナリオチームの現場が感じるROOTSの意義

ROOTS 水野 崇志
シナリオ担当者 中山 可南子
シナリオ担当者 小泉 洋平
INTRODUCTION
横串のシナリオ組織「ROOTS(ルーツ)」が発足した経緯やその役割について紹介した前編に続き、後編では各プロジェクトの現場でシナリオ職として活躍されている小泉洋平さんと中山可南子さんに参加してもらい、その理解をさらに深めていきます。今回は「ROOTS」のリーダー水野崇志さんにファシリテーターを務めてもらいました。
水野 崇志

前編にも登場してもらったアカツキのシナリオ横串組織「ROOTS」のリーダー。後編となるこの鼎談ではファシリテーターを務めてくれている。

小泉 洋平

アカツキ入社後、自社IPのチームにシナリオライターとして参加しながら、外部に発信されるIP関連のテキストの管理なども担当している。

中山 可南子

アカツキ入社後、複数の他社IPチームでシナリオディレクター/シナリオチームリーダーとして管理業務に携わった後、現在は自社IPの新規立ち上げに参加している。

一人ひとりが積極的に発信して
議論できるような環境を作る

今回はアカツキのシナリオ職能を知ってもらうため、対照的な役割で活躍されているお二人からお話を伺う機会を用意させてもらいました。まずはお二人が今現場でどういうことを担当されているか、役割と業務内容についてお話いただいてもよろしいですか?
小泉:現在は自社IPのシナリオチームに参加していて、その中でメインのシナリオライターとクオリティ管理という役割を務めさせてもらっています。シナリオライターとしては、プロデューサーと協議した上でのプロット作成と実際のシナリオ執筆を担当し、クオリティ管理の面では他メンバーが書いてくれたシナリオを見て、キャラ感や、これまでに積み上げられてきたシナリオとの整合性がちゃんと取れているかの確認といった最終調整をしています。
中山:私は他社IPと自社IPの両方で、シナリオディレクターとシナリオチームリーダーという形で関わらせていただいています。シナリオの執筆はライターさんに任せ、シナリオの関わる仕様や企画面でディレクターやプロデューサーとのパイプ役を務めたり、チームや進行、タスク周りの管理を主な業務としています。
プレイヤーとして最前線で書かれている小泉さんと、プロデューサーとシナリオライターの結節点としてチームをサポートしてくださっている中山さんには、それぞれ別の視点からお話していただくことでシナリオ職能を掘り下げていければと思っています。まずは自社IPのシナリオについて、クオリティリーダーを務められている小泉さんにお聞きしたいのですが、そもそも小泉さんは入社前からアカツキのタイトルのユーザーだったんですよね?
小泉:そうですね。熱烈なユーザーとして遊んでいました。そもそも入社の経緯も、ゲーム作りの人たちが集まる懇親会に出席した時にアカツキの方も何名か来られていて、その時に「めちゃくちゃ遊んでいます。いつもありがとうございます」って挨拶させてもらったのがきっかけでしたからね(笑)。水野さんもその場にいらっしゃいましたよね。
水野:あれはびっくりしました。最初はただのビジネストークかと思っていたら、本当に熱量が高くて、コンテンツ愛に溢れていて、「これはガチのファンだな」って(笑)。面白い出会いでしたよね。
小泉:本当に夢物語です。この場を借りて感謝したいくらいですね(笑)。
水野:ユーザーとして純粋にタイトルが「好き」というところから始まりましたが、仕事をする上でどんなことを大切にしていますか?
小泉:作品がテーマとして大切にしている要素を守り続けることと、フィクションとリアリティのバランスを常に見つめ続けることですね。前職からずっとシナリオライターをやって来て、今加わっている作品ほどシナリオを評価していただけることはなかったので、自分の実力の無さを日々痛感しながらも、ユーザーの皆さんに楽しんでもらえるシナリオを守っていきたいと思っています。
水野:今携わられているタイトル以外も含めて、自社IPの魅力とはどんな部分だと思いますか?
小泉:作り手としては、やはり0から1を生み出すことができるのが自社IPの魅力だと感じています。もちろん、続けていく中で積み上げられたものはあるので、なんでも好き放題というわけではないですけどね。
水野:自社IPの中にはシナリオが完全に内製化されているタイトルもありますよね。そういった場合に、チーム内の雰囲気作りなど、クオリティリーダーとして気にされていることはありますか?
小泉:内製化されている自社IPの場合は特に、メンバーみんなの中にある「面白い」を集めて作り上げることが大事だと思っているので、一人ひとりが積極的に意見を発信して議論できるような環境を作るようにしています。もちろん時にはお互いの意見がぶつかることもありますが、ものづくりの場においてそれはとても健全なことだと思うので、感情的にならないように気をつけながら、お互いが納得できるように話し合う姿勢を大切にしたいと思っていますね。

IPの知見を高めるために
勉強する時間を必ず置く

次は他社IPにおけるシナリオ業務について中山さんにお話を伺わせていただきたいのですが、そもそも中山さんはアカツキ入社前からシナリオ職に携わられていたんですか?
中山:前々職ではシナリオに関わるプランニング業務に携わっていました。しかし前職ではゲームプランナーとして働いていて、そこで「やっぱりシナリオ専門職に戻りたい」と思ったことで転職活動を始め、アカツキに入社したんです。
水野:ありがとうございます。それではこれまで、他社IPのシナリオ業務に携わられる上で、どんなことを大切にされてきましたか?
中山:既存のIPをお借りしての作業となるので、そのIPが既に持っているファン、その方々の中にあるイメージや世界観を崩さないというのは常に念頭に置いていますね。
水野:「崩さない」というのは、実はとても難易度の高いことですよね。中山さんならではの工夫など何かありますか?
中山:私ならでは、というわけではないのですが、IPの知見を高めるために「勉強する時間を必ず置く」ことは強く意識しています。それこそ入社当社はキャラの設定、ストーリーの流れ、よく言うセリフなんかが自分に染みつくまでひたすら勉強していました。そうしないとファンがこのIPのどこで喜んでいるのかは理解できないと思っています。それはメンバーにも求めることなのですが、今までのチームはみんな熱量が高く、自発的に勉強してくれているので助かっています。
水野:入社してすぐ「ひたすら社内で漫画を読む」という作業に罪悪感を覚える方もいましたよね。こちらも「それが仕事だから大丈夫!」と(笑)。
中山:社内だと不安になりますよね(笑)。でも、それが一番重要なんですよね。
水野:そうですね。そうした勉強も含めて、自社IPとは異なる「すでに存在する枠組みの中で作ることの難しさ」もあると思うのですが、その点でシナリオチームリーダーとしてメンバーにどんなをサポートをしていましたか?
中山:アカツキにはチームランチの制度があるので、月に1度は利用して、チームのみんなでご飯を食べながら最近面白かったアニメの話をしたり、ただの一ファンに戻ってそのIPのDVDを観たり、「単純に楽しい時間を過ごすこと」はするようにしています。みんなが「ただのオタク」になれるだけで、チームの仲って良くなるんですよね。
水野:中山さんが別タイトルのチームにヘルプで入ってもらった時も、みんなが中山さんのことをすぐに信頼していましたけど、そうやってチームをまとめてくださっていたんですね。
中山:あとは、なるべくライターさんが困ることがないように、何かを執筆する前に必要そうな資料があったら全部集めておいたり、困ってたらすぐに声をかけたりとか、心地よく作業ができる環境を整えることでサポートしようと意識しています。

「面白かった」っていう反応が
返ってくるだけで全部報われます

それではお二人にお聞きしたいのですが、シナリオ職の「やりがい」を感じるのはどんな時ですか?
小泉:やっぱり1番嬉しいのはユーザーの方々の反応です。たとえプロットの段階から頭を抱えていようが締め切り前に追い込まれようが、自分の中でやりきったと思えるものが世に出た時に、そこに「面白かった」っていう反応が返ってくるだけで全部報われますね。ただ、自分ではあまりエゴサーチはしないので、チームメンバーに「あのシナリオすごく評判良かったですよ」って教えてもらった時に「どれどれ?」って覗きにいくくらいですけど(笑)。
水野:コンシューマゲームだとシナリオの完成からリリースまで数年待つこともありましたが、ソーシャルゲームはシナリオを書き上げてすぐにリリースされるので、リアルタイムでファンの反応が見られるのは僕たちシナリオライターにとってすごく有り難いですよね。中山さんはどんな時に「やりがい」を感じますか?
中山:私もユーザーの方々に喜んでもらえた時が1番嬉しいですが、自分で執筆しているわけではないので、そこには1つのシナリオをみんなで作れたということ、「みんな、でよくやったね!」という気持ちが強いです。
水野:リーダーとして様々なサポートをしているからこそ感じられる「やりがい」ですね。それでは逆に、お二人がシナリオ職で「辛いと感じる時」はありますか?
小泉:これは「シナリオライターあるある」だと思うんですけど、僕たちの作業の中で1番抵抗があるのって、自分の書いたものが他の人に手直しされて世に出ることだと思うんです。それを今、クオリティリーダーの立場として自分が「手直しする側」になっている。シナリオライターとしての自分が不満に感じてきたことだからこそ、その作業にはいつも悩んでいますね。本当は一言一句、句読点の位置を変えるだけでも、書いてくれた人と納得し合えるまでコミュニケーションを取りたいんですけど、全ての制作物に対してそれをするのは時間がかかり過ぎて現実的ではないので……。そもそも僕が意見をうまく伝えられなかったり、向こうの意見を僕が汲み取れなかったりしてぶつかってしまうこともありますからね。ただ、それは今の役割を任せてもらえたからこそ「ぶつかれた」壁なので、辛いというよりも、自分の課題として「頑張らなきゃな」と思っています。
水野:自分で書く時の辛さとはまた違って、ライティングの感覚的な部分をロジカルに言語化して人に伝えるのは、一朝一夕では対応できない難しさがありますからね。でも「ROOTS」のリーダーとして小泉さんと「1on1」を繰り返していく中で、悩みながらも、どんどん視野を広げていったと感じています。ライター個人の視点から、チーム全体のシナリオを俯瞰するクオリティリーダーの視点に。それはすごい成長ですよね。
小泉:ありがとうございます。
水野:今後もいっしょに悩みつつ、成長していきましょう(笑)。中山さんはいかがですか?
中山:私はシナリオライターではないのでどうしても、ライターの方の気持ちを共有し切れないという辛さはあります。シナリオディレクターという管理する立場として、例えばメンバーがスランプに陥った時に「励ますことしかできていない」と思ってしまうんです。それでも、廊下ですれ違った時にちょっと話すとか、煮詰まってたら声をかけてみるとか、新しいアイディアをゲットしてもらうためにチームで相談できる機会を設けることで、みんながスランプを抜け出せるように頑張ってはいますね。
水野:シナリオライターってやっぱり、自問自答の中で苦しんでしまうので、その気持ちを適切に理解してサポートするのはとても難しいですよね。それでも、そうやってこまめに声をかけるなど、丁寧なコミュニケーションをとって下さるのも中山さんのスキルだと思っていて、こまめに声をかけてもらえるだけでみんな助かっていると思いますよ。

共通言語を用意してくれたことで
キャッチボールができるようになった

ここまではお二人それぞれの視点からお話を伺ってきましたが、そもそもシナリオ職について、アカツキと他社との違いは感じますか?
中山:「ROOTS」のような横串のシナリオ組織が存在する会社って、そんなに多くはないですよね。「ROOTS」の存在は、転職活動をしていた当時の私にとって「シナリオを軽視していない会社なんだ」と思わせてくれ、応募のきっかけにもなりました。
水野:そう言ってもらえるとうれしいです。
中山:そもそも私のような「シナリオディレクター」という、ライティングではなくマネジメントがメインとなるシナリオ職があること自体が稀で、それはアカツキには「シナリオ職で困った時に助けを求める場所がある」、「会社の中でシナリオ職が繋がっている」からこそだと思っています。
小泉:僕もそれは感じています。そうした環境があるからこそ「自分ももっと成長しないとな」って思わせてくれるんですよね。付け加えるなら、「一人ひとりのやりたいことを、出来る限り叶えようとしてくれる」こともアカツキの素敵なところだと思っています。僕も以前、自分の意志でシナリオチームリーダーに挑戦したことがあったんですけど、正直全然うまくいきませんでした(笑)。でも、そうした管理職に就いてみて、プロデューサーとの打ち合わせや他セクションの方々との連携を取るような業務に力を注ぐ中で改めて「自分はセリフを、言葉を、文字を書きたいタイプなんだな」って実感することができたんです。

水野:僕もライターをやっていたから分かります。属性というのはやっぱりありますから、一人ひとりが「活きる」環境で仕事をすることが1番ですからね。
小泉:今また自分の能力を活かせるシナリオライターとして、そしてクオリティリーダーという責任ある立場にも置いていただけたわけですけど、普通の会社でそんな相談をしたら多分「わがまま言わないでくださいよ」って流されちゃうこともあると思うんです。そんな時に「ROOTS」のリーダーである水野さんや当時のプロジェクトリーダーの方が親身になっていっしょに考えてくれたことは、アカツキならではの魅力だと思っています。
水野:僕からしたら、リーダーとして成長された小泉さんが、それを糧にライターとしてさらに成長してくれたので、むしろ「チャレンジしてくれてありがとうございます」という気持ちです。成長という点では、「ROOTS」としてクリエイティブ面の研修、書籍配布、メンバー間の交流会といった施策も行っていますが、お二人からするとどんな印象ですか?
中山:研修に関しては特に、本当に感謝しかないです。実際に今のチームでも、そこで学んだ理論をさっそく使っていますし、何よりライター間に共通言語ができたことで、今までは感覚的にフィードバックしていたものを認識の齟齬なく伝えられるようになりました。
小泉:シナリオライター同士のコミュニケーションって、感覚と感覚でぶつかっちゃうというか、「僕はこれが面白いと思う」「いや、自分は面白いと思わない」みたいになってしまうこともあるんですけど、そこに「ROOTS」としてロジカルな共通言語を用意してくれたことでキャッチボールができるようになったのはありがたいです。
水野:そうやってすぐに活かしてもらえたのは嬉しいです。そのまま忘れられたら残念だなっと心配していたので(笑)。今日は色々とお話を伺ってきましたが、最後に、お二人の今後の目標を聞かせてもらってもいいですか?
中山:水野さんも以前インタビューで言われていましたけど、ゆくゆくは「シナリオと言えばアカツキだよね」と言ってもらえるようになりたいです。それが実現できるようにシナリオライターもシナリオディレクターも、継続的にスキルを底上げしていく必要があるので、そのためにも「ROOTS」には今後も活動を続けてもらい、私たちのことを支え続けていただきたいです。
水野:是非、いっしょに頑張りましょう。
小泉:僕としては、シナリオライター同士で協力し合って面白いものを作っていける雰囲気は残しつつ、仲良しこよしで終わるのではなく、お互いが切磋琢磨していける環境を作れるのがベストだと思っています。対抗意識が強くなり過ぎるのは良くないですけど、「負けてられるか」みたいな気持ちがあることでもっと成長できると思いますし、それが結果的には作品をより良くすることへ繋がっていくはずなので、そんなライバル関係を築いていくことが目標ですね。
水野:ライター同士がお互いのシナリオに感動しながら、それを越えるものを書くために切磋琢磨していけるというのは素晴らしいですね。僕もお二人から良い話を聞けて改めてやる気が出ました。今日はありがとうございました。