INTERVIEW

ゲーム開発に関わる様々なリスクを横断的に解決

Think@ 小崎 卓也
CAPS 安納 達弥
法務  飴野 廣人
INTRODUCTION
アカツキには、ゲーム開発の各段階で必要とされるリスクマネジメントのために、それぞれ設けられた専門組織の枠を超えて横断的に活動するバーチャル組織「ケルベロス」がある。前半となるこの記事では専門3組織のリーダーを迎えて、それぞれが担っているリスクマネジメント業務、「ケルベロス」発足の経緯、そして実際の活動について聞きました。
小崎 卓也

2017年のアカツキ入社後、2018年3月には各ゲーム事業を横断して、「ゲームの作り手・クリエイターが制作に集中できる」ような環境づくりやチーム運営を支援するための横串の業務推進・課題解決チーム「Think@(シンカ)」を発足、リーダーを務めている。

安納 達弥

創業期メンバーとして2011年にアカツキに入社後、2015年には「顧客とプロダクトの満足度最大化」を追求するチームとして「CAPS(Customer And Product Satisfaction)を組織。2020年4月からは地方拠点であるアカツキ福岡の代表取締役CEOも務める。

飴野 廣人

社内弁護士として2016年にアカツキに入社。現在はリスクマネジメント業務と知財業務を担当し、その一環として「ケルベロス」の発足に関わることとなる。

レギュレーションを
作り始めたのがきっかけ

このインタビューでは、リスクマネジメントという面でアカツキのゲーム開発を支える横断的バーチャル組織「ケルベロス」について知ってもらうことが目的となります。メンバーである小崎さん、安納さん、飴野さんはそれぞれ普段は別のチームにも所属しながら並行して活動されているとお聞きしました。まずは3人の簡単なプロフィールから教えていただけますか?
小崎:私は「Think@(シンカ)」という、アカツキのゲーム事業を横串で俯瞰してリスクマネジメントにあたるチームを2018年3年に立ち上げ、リーダーを務めています。各プロジェクトのトラブルシューティングを担当しながら、組織全体として再発させないような取り組みを推進していくという役割ですね。
安納:私は「CAPS(キャップス)」という、リリース前のゲームの動作検証といった品質チェックをしたり、リリース後のカスタマーサポートといった顧客対応を役割としている組織の取りまとめを行っています。
飴野:僕は社内弁護士としてアカツキに入社して、肩書でいうと「法務」になるのですが、会社規模が大きくなってきたことで、今は法務部を契約書業務と全社のリスクマネジメント業務の2つに分割させて、後者を担当しています。なので自称ではありますが「リスクマネジャー」という肩書も持っています。
3人それぞれが別の領域でアカツキのリスクマネジメントにあたられているわけですね。そこから連合組織というか、より横断的にリスクマネジメントにあたるバーチャル組織「ケルベロス」が発足された経緯を教えていただけますか?
小崎:最初は2018年の後半に、「Think@」と「CAPS」でレギュレーションを作り始めたのがきっかけでしたよね。アカツキとしてもプロダクトが増えてきたり、外部のディベロッパーさんと共同開発する機会が増える中で、「プロダクトの品質を保つために、何ができるのだろうか」ということを一生懸命考えている時期でした。
安納:そうですね。各プロジェクトがバラバラに動いているような感じだったので、小崎に「アカツキ社内で統一して利用できる開発用のレギュレーションを作らないか?」という話しをしたところ、「僕らもそう思ってたんですよ」と言ってくれて、それが始まりだったと思います。
その時に作ったレギュレーションとは、具体的にどんな内容のものでしたか?
安納:ゲームの機能はもちろんタイトルごとに異なるのですが、ログイン時のプライバシーポリシーの表示だったり、課金アイテムを買うときの資金決済法の表示だったり、ガチャの仕組みはこういう機能を実装しなくてはいけないといったものですね。世の中にリリースするにあたって、法律を厳守するために必ず対応しないといけない決まりや、担保しておかないといけない共通のルールが存在するのです。
ゲーム開発の上で「必ず守らなくてはいけないルール」ということですね。
安納:そうですね。必ず対応しないといけないルールなんですが、それまでのアカツキではそうしたルールが明文化されて整理されていなかったために、「以心伝心」みたいな形で伝えられ、みんなが「経験と勘」に依存してしまっている部分がありました。しかし、複数のゲームタイトルの開発が同時に進んだり、外部の開発会社さんと関わりながらそれらを並行して動かすような状況へとビジネスが拡大する中、都度ルールややり方を聞かれることが増えていき、「アカツキのゲーム開発として最低限守ってもらわなくてはいけないルール」をまとめておく必要性を強く感じました。結果、いつでも参照できるようにと作ったのが、そのレギュレーションでした。
小崎:何より不具合を減らして品質を上げたかったですからね。それに半年くらいかけ、レギュレーションとしてそれまでの知見を言語化すること自体、自分たちの認識を整理することができて楽しくもありました。
飴野:法務は、Think@とCAPSで作っていただいたドラフトのリーガルチェックを行うという形で、最後の方に関わらせていただきました。

3組織が揃ったミーティングから
得られるものが大きかった

そのレギュレーション作りが、3部門にとって初めて連携した作業となったわけですが、リスクマネジメントの観点からその手応えを感じることはできましたか?
小崎:そのレギュレーションをベースにして話せるようになったことで、多角的にチームをフォローすることができるようになったと思います。メンバー間でちゃんと理解できているか、逆に理解できていない時も「理解できていない」ということをみんなが認識でき、その上で「だったらこうしなきゃね」と話ができるようになりました。
安納:守らなければいけないルールがレギュレーションとしてまとめられたことで、そのレギュレーションをベースに社内にも外部の開発会社さんにも共通して開示できる「アカツキのルール」ができたので、様々な質問やお問合せに対応しやすくなったなと感じます。
飴野:飴野:社内のルール作りを行う上で、法令等の上流を担当している法務側と実際にルールの中でゲーム開発や運用を行うことになる現場側が密に連携することは、とても大きなプラスになっています。法務は一般的に依頼を受けて動くという社内受託サービス的な機能になってしまうことが多いんですが、レギュレーション作りをきっかけに、法務が主体性を持って現場側と関われるようになったということが1番の収穫でしたね。
それまでは「Think@」や「CAPS」が法務と密に連携を取るということはなかったんですか?
小崎:あることはありましたが、法務がリスクマネジメントまでしっかり関与するというのは難しかったですね。
飴野:当時は人員的にも限られていましたからね(笑)。今は体制も整ってきたので、リスクマネジメント業務にも注力できるようになりました。
レギュレーション作りでの連携がきっかけとなって、横断的にリスクマネジメント業務を担う「ケルベロス」が誕生したわけですね。
飴野:そうですね。レギュレーションの振り返りだったかな、3組織で集まってMTGを実施したときに、ミーティングから得られるものが大きくて。「この3組織で動くのって良いね。今後も定例を開こう!」みたいな熱い雰囲気になり、誕生したのがケルベロスです。
ケルベロスという名前は、3つの部署が一つになるから、三つ首のケルベロスでいいじゃん!みたいな非常に適当なノリで付けました(笑)。今までは3つの部署の誰にすれば良いか分からなかったようなリスクマネジメントに関する問い合わせを「この中で共有・解決するので、とりあえず僕らに投げてくれればいいですよ」っていう機能を担えたらいいなと思っています。
「ケルベロス」のような、リスクマネジメント面に特化した横断型の組織というのは、他社と比べても珍しいものなんですか?
安納:プロダクトのリスクマネジメントを横串で管理している組織があるという話自体、あまり聞かないですね。あったとしても法務部門まで巻き込んだチームが存在しているというのは稀なのではないでしょうか。一般的に事業部門と管理部門として、分断されているイメージがあります。法務に「とりあえず相談に乗ってください」みたいにできる「ケルベロス」のような体制は私たちの特徴であり、強みであると考えています。
飴野:大上段の法律の話をしている法務と、顧客対応という現場のオペレーション部分を守ってくれている「CAPS」、管理部と現場を繋いで戦略設計を担う「Think@」という3つの組織が、別々の視点を持って対立するのではなく、1つになって同じ目線を持てているというのは、珍しいですよね。それはアカツキの特徴でもあり、ゲーム開発運用を最初から最後までサポートできるという大きな魅力でもあると思います。

一貫性を持ったリスマネを
「一瞬」で決められるようになった

ちなみに「ケルベロス」というのは、小崎さん、安納さん、飴野さんの3名を指す名称なんですか?
飴野:いや、僕たちだけではなく、あくまで三つ首の組織を指す総称です。「Think@」、「CAPS」、「法務」と、正確に言うとアカツキ台湾支社の「ビーコン」という組織も今は加わったので、四つ首なんですけどね(笑)。ミーティングもその時々のアジェンダに応じてメンバーを呼ぶ感じですが、いつも大体7~8人くらいで行っています。
「ケルベロス」としてのミーティングは今も定期的に開かれているんですか?
小崎:2019年度からは隔週で開いていますね。レギュレーションを作ったとは言え、今までにはなかったインシデントが起きたりもするので、定期的にレギュレーションをブラッシュアップするなど、そうした課題に対しての仕組みは1つ1つ丁寧に作り続けています。
「定期的にレギュレーションをブラッシュアップする」と仰られましたが、コンシューマゲームからスマホでのソーシャルゲームまで目まぐるしい進化を続けてきたゲーム業界において、ゲーム開発におけるリスクマネジメントの役割や手法もまた変わり続けているのでしょうか?
飴野:法令のところで言うと劇的に変わっています。ゲーム業界は1990年代のコンソールゲーム、2000年代のオンラインゲーム、そして2010年代のソーシャルゲームのように、プラットフォームやビジネスモデルが変わるほどの大きな変革が定期的に起きる分野なので、その中で当然ながら適用される法律も変わってきていますし、時には適用される法律が「ない」という状態もあるんです。法務面のリスクマネジメントとして、「ブロックチェーンで新しい指針が出てますよ」とか「また業界団体ができたみたいですね」など、細かくかかる規制や行政のスタンスの変化は今も常にキャッチアップし続けています。
そうした情報がレギュレーションに随時組み込まれていくわけですね。
飴野:ゲームに関する「完璧な基準」は多分できないと思いますから、問題がある度にひとつずつレベルアップさせるようなRPG感覚で捉えていますね。どんどん強くなっている感覚もありますし、それを「ケルベロス」として全員が担保できているのはとても良いことだと思います。
安納:飴野が言ったように、新しいテクノロジーが出てきた時のリスクって「実際にそうなってみないと分からない」し、ゲームの施策は常に新しいものが動いていて、都度いろいろな問題や事象が発生するので、そこをみんなで柔軟に考えられる「ケルベロス」という環境があることは、アカツキのゲーム開発を支えていく上での強さだと思います。
小崎:「Think@」の立場からすると、私たちは普段プロダクトチームと話すことが多いのですが、以前は私たちだけでは分からなかったリーガル観点や法的リスクといった専門的知識は法務に、仕組みを整える時にプロダクト側の負担となっていたようなことを第三者チェックとして「CAPS」に入ってもらうなど、一貫性を持ったリスマネを「一瞬」で決められるようなった、そのスピードも強みに感じますね。
飴野:確かに「変化に対応できるスピード感」という自負はありますし、「ケルベロス」として慣れてきたことで、そのスピードもより速くレベルアップしていると思います。