INTERVIEW

開発チームとのフラットな関係で “モバイルゲームならではの新しいマーケティング“に挑戦

Marketing 窪田 真太郎
Head of IP Business 野澤 智信
INTRODUCTION
“モバイルゲームならではのマーケティングの在り方”に挑戦しているアカツキのマーケティングチーム。ゼネラルマネージャーを務める窪田真太郎さんと、ゲームプロデューサーの野澤智信さんより、アカツキのマーケティング組織の在り方や取組みを紹介します。
窪田 真太郎

インターネット系の広告代理店を経て、2016年4月にアカツキに入社。現在はCMO(Chief Marketing Officer)として、自身もプレイヤーとして活躍しながらマネジメント業務に従事。

野澤 智信

慶應義塾大学理工学部卒業後、2014年にアカツキへ新卒入社。複数の新作ゲームタイトルの立ち上げプロデューサー/ディレクターを経て、ゲーム事業部副部長を務める。2020年4月より、ELT(Executive Leadership Team)として、IPづくりに向けた映像事業の立ち上げ及び、新作タイトルのプロデューサーを務める。

三度目の正直!?
トライ・アンド・エラーを繰り返した模索期間

このインタビューではお二人の関係や過去の取組みの話を通じて、マーケティングチームの役割について詳しくお聞きしたいと思っています。まずはお二人の役割や関わりについて教えてください。
野澤:僕は、プロデューサー兼ディレクターとして全体を統括するような、幅広い範囲でタイトルに関わることが多いです。その中でマーケティング領域の話で言うと、他のソーシャルゲームでは「開発すること」と「どう広げていくか(ファンの方々にしってもらうか)」が別々に動くこともあるようですが、僕たちはコンセプトベースを作っているような早期の段階からマーケティングチームと対話をしています。それは「作ったものを広げてもらう」というよりは「良い作品をいっしょに開発して、一緒に広げる」という思考を大事にしているからですね。
窪田:僕はアカツキのマーケティング職能部署を統括しつつも、自身でもマーケティングプレイヤーとして野澤のプロジェクトをはじめ、チームメンバーと共に新規タイトルの立ち上げやサービスグロースを担当しています。野澤からもありましたが、アカツキのマーケティングチームはプロジェクト初期のタイミングからプロデューサーや開発チームのパートナーとして入り、ブランド構築を考えたり、P/L管理や予算策定を行ったりというのを、初期・中長期それぞれで担当しております。
冒頭でもありましたが、お二人が一緒に担当されるのは3プロジェクト目なのですね。関わり始めた当初からこのようなマーケティング組織だったのでしょうか??
野澤:窪田と一緒にプロジェクトを初めて担当をしたのは2017年だったのですが、当時はプロモーション、特にデジタル広告の最適化が得意な組織でした。
窪田:一方で、モバイルゲーム業界が成長期から成熟期への転換を迎えている時期であり、部署の変革が必要なタイミングでした。当時得意領域であったデジタル広告の運用を非注力領域に設定をして、ファンマーケティングの領域を注力領域として、チーム編成を行いました。また、体系立てて戦略立案をするスキームが構築されていなかったので、消費財メーカーの事例を参考にフレームワークを部署に取り入れたりもしました。
なるほど。ダイナミックに部署を変えられたんですね。ちなみに、うまく行ったこと、一方でうまく行かなかったことなど、お聞かせいただけますか?
野澤:ほとんどうまく行かなかったんじゃないですかね(笑)。僕も窪田も試行錯誤しましたが、結果としては失敗続きだったと思います。
窪田:そうですね(笑)。今でこそ少しは笑い話としてお話できますが、本当に落ち込むぐらい失敗続きでしたね。マーケティングKPIが大幅に未達で事業的に厳しい結果になったときもありました。ただ、その中でファンマーケティングなどは光が見え始めたり、何故うまく行かなかったのか?などを徹底的に振り返り、経験として積み上げていくことができましたね。失敗が続いた中でもチャレンジをさせてくれた環境には本当に感謝しています。当然、僕とタッグを組み続けてくれた野澤に一番感謝しています(笑)。
野澤:なんか、照れますね(笑)。ただ、プロデューサーとして、窪田とタッグを組むのは3周目になりますが、会社・組織にマーケティングの引き出しが徐々に積み上がってきている感覚はありますね。振り返ると、今議論している内容も過去の失敗から得られた財産だと思いますし、それがあるからこそ、当然昔とは比較にならないほど高い次元で議論ができていると思います。“失敗を財産にする”というアカツキの会社哲学が上手く表せているケースだと思います。

「UNI‘S ON AIR(ユニゾンエアー)」が
多くのファンに遊んでもらえた、マーケティング領域での新たなチャレンジ

タッグを組んで3つ目のプロジェクトである、『ユニゾンエアー』について聞かせてください。2019年9月のリリースから現在までの1年弱で400万ダウンロードを記録しておりますが、これを支えた大きな要因は何だと考えていますか?
野澤:『ユニゾンエアー』のブランドを一から定義・構築をして計画を練ったことが、大きいと考えています。群雄割拠な環境だからこそ、しっかりとブランドを尖らせエッジの効いた戦略を立てないといけないと思っていました。アカツキとしては新しいチャレンジになりましたが、良い結果を導けたと思います。具体的には、3つほど意識して計画を練っており、「クリエイティブを厳しく統一すること」、「適切な期待値を醸成すること」、「しっかりとファンの方と対話をすること」でした。
窪田:『ユニゾンエアー』にはリリースする1年ぐらい前より、ユーザーテストなどで関わっておりました。そこからマーケティングプランを考え始めたのがリリースする9ヶ月ぐらい前だったのですが、野澤から相談をもらった際は、高いハードルだなぁと率直に思いましたね(笑)。ただし、群雄割拠な環境であることは僕自身も理解していましたし、モバイルゲーム業界のマーケティングにおける所謂“お作法”みたいな施策を実施したとしてもエッジが立つことはなく、情報・コンテンツが埋もれていくだけだと思っていたので、新たなチャンスだと捉えてチャレンジしました。
野澤:ファンの方々にとって自分たちはどういうキャラクターであるべきなのか?や、言葉のトーン&マナーはどういったものが良いのか?など、上段のブランドコアから設計をして、そこから初めて施策に落としこんでいきました。ここまで設計するモバイルゲームは他にはあまり無いのではと思いますね。
窪田:そうですね、新しい試みだったと思います。広告や公式サイトなどのクリエイティブを制作するにしても、上段で設計したブランドコアに沿って開発をしていたので、ブランドイメージを統一することができました。ただ、当時を振り返ると、モバイルゲームマーケティングのお作法から脱却する決意はあったものの、今まで積み上げてきたものとは異なるテイストだったので、やはり怖さもありましたね(笑)。
野澤:コアファンを意識したゲリラ要素が入った情報初出も、そこからの適切な期待値醸成を行うためのコンテンツマーケティングも、アカツキとしては過去にないプロモーションでしたね。新しいチャレンジでしたが、クリエイティブ開発におけるパートナーディレクションや、コンテンツマーケティングの企画進行など、積み上がってきたものがベースとなっているなとは感じていました。

細かくデータを取っていたからこそ
次の課題も見つけられました

そうしたマーケティング戦略も身を結び、現時点で約400万ダウンロードにつながっていますが、次のチャレンジはどう考えていますか?
窪田:それが今まさに難しい問題で、野澤とも協議しているところなんですけれど、初期設計からのプロモーション戦略は「アッパーまで来た」と感じています。ここからもう一段上に行くために、何かしらの目線の切り替えであったり、コミュニケーションの再設計が必要とされるフェーズに、今ちょうど入ったんですよね。
野澤:そうですね。今までのプロモーションが上手くいったのには、プロモーションのKPIをちゃんと設定して追ってきたからということがあって、「9セグ」と呼ばれる、市場の特性を9つのクラスタに分けてトラッキングすることで、プロモーション予算をうまく配分する設計ができていたからということがあります。そうやって細かくデータを取っていたからこそ、毎月3~4%は伸びていた認知度がここ最近で頭打ちになったことが分かり、「これはもう明確にブランディングやコミュニケーションプランを変えないと突破できない」という次の課題も見つけられました。
窪田:こうしてプロモーション戦略をトラッキングしてデータで判断し、今までは定性的だった部分を数値化して見るというのも、ゲームのマーケティングとしては新しいことだと思います。ただし、先程もお話しした通り、現在の積み上げではアッパーが見えてきたので、何かしらのチャレンジが必要になってきました。例えば、USJが“映画のテーマパーク”から“エンターテイメントのセレクトショップ”へポジションを変化させたことで、ターゲット拡張、及び事業成長を遂げた事例があるように、『ユニゾンエアー』のブランド再成長へのアプローチにこそ新しいチャレンジがあると思いますし、取り組んで行きたいですね。

自分もプレイングしながら
メンバーの育成もしていく

『ユニゾンエアー』への関わりを通して、アカツキのマーケティングチームにはどんな知見を貯めることができたと感じていますか?
窪田:プロモーションKPIのトラッキングや、サービスの初期設計、ブランディングの構築方法などは良い財産になったと思います。
窪田さんはゼネラルマネージャーとして、そうした知見を今後どのようにチームメンバーに共有していこうと考えていますか?
窪田:『ユニゾンエアー』でもやっていたことですけれ、まずは僕と野澤とのミーティングにパートナーとして同席してもらいながら、1on1でノウハウを染み込ませることが1番の成長だと思っています。そこからそのメンバーが他メンバーにも1on1でノウハウを伝搬させていってもらえると良いですよね。あとは、今は働き方が変化する中、再設計しているところではありますが、マーケティングチーム内で隔週開催している「アカデミー」で事例紹介することで、ノウハウを伝えたりしています。
「アカデミー」とは、具体的にどんなことを行っているんですか?
窪田:1つは先ほど話した事例紹介で、もう1つはMBAなどで出題されているような過去の成功要因をみんなで考えながら、ゲームに応用できるようにメタ的に分析したりしています。後者は正解のないものですけどね。
マネージャーとしてそうやってメンバーの育成にも携われる中で、窪田さんが考えるマーケティングチームにとってのは「アカツキらしさ」とはどういったものだと考えていますか?
窪田:僕は「成長」と「繋がり」という2軸を大事にすることがアカツキらしさだと考えていて、ちょっと泥臭くて体育会系かもしれませんが、成果を得るために諦めずに「成長」していくようなポジティブさは今のメンバーにも感じますし、これからも求めていきたいなと思っています。「繋がり」というところでは、マーケターは利益を投資に回していくような、プロデューサーやディレクターや開発エンジニアが生み出したお金を使わせてもらうポジションなので、そうした人たちとの「繋がり」、義理や仁義や思いやりを忘れないことが大事だと思っています。それは当然ファンに対しての「繋がり」でもありますよね。
野澤:マーケティングチームとプロダクトチームとの距離が近いことも「アカツキらしさ」ですよね。僕のようなプロダクトチームから見ると、「売り方を考える」だけの営業的なものではなく、もっと深く広い範囲で「ものづくりビジネスに携わってくれている」感覚があるので、すごく頼りにしています。
野澤さんから見て、マーケティングチームのマネージャーとしての窪田さんの資質とはどんな部分だと思いますか?
野澤:窪田は本人がプレイヤーでもあるので、モチベーション管理によって部下の強みを引き出すような育成をするタイプのマネージャーというよりは、ある種ツーマンセルで動いていっしょに考えていくようなやり方ですよね。苦労されていた時期も近くで見ていたので、そうした自身のマネージャー像をしっかり作って今実績を残しているのは優秀だなって思います。
窪田:……よく見てますね(笑)。マーケターって基本的にマネージメントよりもプレイングをメインにやりたい人が多いんです。自分自身もプレイングしながらメンバーの育成もしていくというのがマーケティング職能の一般的な制度なんだなって、実践しながら思いました。これからも、そうした舵取りをしていきたいですね。